1回戦負けの常連から甲子園出場へ。
白山高校は「数」で常識を覆す

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

 池山コーチは宇治山田商出身で、中井大介(巨人)の1学年上にあたる。強豪校の野球部を経験している池山コーチにとって白山は「常識を覆す学校ですよ」と言う。なお、池山コーチは前任の津商でも部長として甲子園初出場を経験しており、「4年間で2回も初出場を経験しているなんて、なかなかないと思うんですけど誰も取り上げてくれません」と笑う。

 2015年からスタッフに加わった諸木コーチは「許容範囲を広げる理由」についてこう語る。

「この学校には真面目な生徒もたくさんいますが、中学時代に先生から相手にされてこなかったような生徒もいます。そんな生徒に頭ごなしに叱ったり、細かくきっちり管理しては萎縮してしまうんです。彼らの言うことを認めてあげて、『今のええやん!』と声を掛けると、うれしそうにのびのびとする生徒が多いんです」

 若いコーチを兄貴分と慕い、気安く接する選手たちだが、東監督を前にすると「ピリッと引き締まります」(諸木コーチ)という。この絶妙なバランスが白山の伸び伸びムードを作り上げているのだろう。東監督は言う。

「田舎の学校なので、監督1人だけじゃなくて、みんなで生徒を見たらいいと思うんですよ。怒り役もいれば褒める役もいて、みんなで温かく見守る。甲子園見学の件でお騒がせした川本先生も、野球が大好きで、生徒たちが大好きな先生です。生徒たちも川本部長によくなついて、私には見せないような笑顔で話していますよ(笑)」

 東監督が少し厳格な父親役、川本部長が優しい母親役、そして若いコーチ陣が兄役。そんな疑似家族のような組織構成こそ、白山が躍進した土台になっている。

 そして白山の強さを語る上で欠かせないのは、「試合慣れ」である。コーチ陣が「ウチのなかでは実力的に抜けている」と語る中心選手、1番・ショートの栗山翔伍は言う。

「1年の途中から試合に出させてもらって経験を積んでいるので、動じずに試合に入れています。公式戦でも練習試合のつもりでやってるんで(笑)」

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