沖学園の新米監督が生んだ「奇跡」。その陰にあった主将交代と56年会 (5ページ目)
「コーチや部長をやっていた頃は、『俺と同い年なのに監督なんて責任のある立場でみんなすごいな』なんて思っていたんですけど、自分が監督になってみてその大変さがわかりました。56年会の縁で練習試合をさせてもらうチームも増えたし、みんなと話すことで気分転換にもなるし、56年会には皆勤賞で参加していますね。ただ、年末に大阪まで行くので、家族にはブーイングを受けますけど(笑)」
56年会のつながりで知り合ったひとりが、益田東(島根)の大庭敏文監督だった。お互いに切磋琢磨し、練習試合を組む仲になったが、何の因果か大庭監督も今夏に監督として甲子園初出場(チームとしては18年ぶり4回目)を決めた。
他にも今大会には野仲義高監督(東海大星翔/熊本)など、部長・副部長を含めると10名の56年会のメンバーが甲子園に集まっている。鬼塚監督は言う。
「僕らは松坂大輔さん(中日)の1学年下に潜んでいた学年です。でも、新しい時代に指導者として活躍している同級生がたくさんいるのは、うれしいですよね。沖学園が甲子園に出たことで心の底から『おめでとう』と言ってくれるメンバーもいる。こんなに苦労したのに、また甲子園に出たくなるんですよ(笑)」
8月6日、北照(南北海道)との甲子園初戦を戦った沖学園は、4対2で初陣を飾っている。試合後、お立ち台に上がった鬼塚監督は感慨深そうにつぶやいた。
「県大会とはまったく違う景色でした。観客の多さ、スタンドの高さ。これが全国の球児の憧れる場所なんだな......とつくづく感じながら、楽しませてもらいました」
次戦は春夏連覇を狙う大横綱・大阪桐蔭と戦う。それでも鬼塚監督は呆れたように、こう続けた。
「ウチの生徒たちは『強いところとやりたい!』と言って、大阪桐蔭と試合することを目標にしていたんです。まあ、気持ちだけでどうにかなる相手ではないので、しっかり対策を立てたいと思います」
悲願の甲子園出場を果たし、その勢いを甲子園に持ち込んだ沖学園。その不思議な力が王者にも通用するのか。2回戦は13日に行なわれる予定だ。
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