今井達也が振り返るあの夏の熱投「投手で日本一になった実感はない」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 岡沢克郎、市川光治(光スタジオ)●写真 photo by Okazawa Katuro,Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)

―― だから作新学院へ入学したんですか。

「そうですね。僕は、兄のおかげでここまで来られたのかなと思っています」

―― しかも、甲子園で優勝です。2年前の2016年、作新学院のエースとして夏の甲子園を制した今井投手ですが、優勝の瞬間、どんなことを感じたのでしょう。

「もちろん嬉しかったんですけど、投げ勝ったよりも打ち勝った試合の方が多かったので、チームメイトに優勝させてもらったという感じでした。それでもいろんな方から優勝投手だって言っていただけるので、『ああ、そういえば優勝したんだな』って思うくらいで......決勝で先に1点取られたのが、響いているのかもしれませんね。あのまま打線が打ってくれなければ負けてますから、ピッチャーとしては優勝したって実感を持てないんですよ」

―― 7-1で勝ったのに、投げ勝った感じがしないんですか。

「だって、完封すれば絶対に負けませんからね(笑)」

―― これまでの野球人生、挫折を感じた瞬間はあったんでしょうか。

「高校2年の夏、(栃木)県大会は背番号11でベンチに入ったんですけど、甲子園では外れてしまって......県大会のベンチ入りは20人なんですけど、甲子園は18人なんです(もうひとり、外れたのは翌年のキャプテン、2年生の山本挙輝)。あれが僕にとっては一番大きな挫折というか、悔しかった出来事です」

―― 外れた理由をご自分ではどう考えたんですか。

「大舞台の緊張感に慣れていなかったこともありますし、県大会でまともなピッチングができていなかったのに甲子園でいいピッチングができるわけがなかったし......つまりは、まだチームから戦力としては認められていなかったということだと思います」

―― その挫折を味わわされて、秋から冬をどう過ごされたんですか。

「2年の夏、ベンチを外れて甲子園のマウンドで投げられなかったので、『3年の夏は自分が1番をつけて、甲子園のマウンドで投げたい』と、それだけをずっと思っていました」

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