東大法学部外野手にスカウトも注目。
志すは赤門初のプロ野手か司法の道

  • 松本英資●文 text by Matsumoto Hidesuke
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 入部直後、軟式あがりの辻居は、硬式野球のレベルの高さをあらためて痛感させられた。だが浜田一志監督は、入学当初から辻居の非凡な野球センスに目をつけていた。

「毎日毎日、『ここはダメ!』『ここもダメ!』といった具合に熱心に指導してくださり、試合にも使ってくれた。そのことが昨年秋の好成績につながったと感謝しています。監督の指導法はノルマを課すものではなく、選手一人ひとりに練習法を考えさせる。『あれをしろ! これしろ!』ではなく、『自分たちで考えてやりなさい』と自主性を重んじる。ただし、体力づくりに関しては、『他の5大学の選手に負けない体をつくれ』と」

 高校時代から自信があったパワーと脚力を生かすため、東大入学後、辻居は投手から外野手へ転向する。

 野手となった辻居が唯一心掛けていることが、フルスイングすることだ。芯に当たればオーバーフェンスが期待できるし、打球が詰まっても俊足を生かして内野安打にすることができる。それに初球を狙い打つ積極性も、辻居の持ち味のひとつだ。

「打席に入るたびに、初球の入りを最大限に意識します。バットを振るも振らないも、想定したボールが初球にこないと、その瞬間から相手バッテリーの後手に回ってしまうので、初球に集中力を高めるよう心掛けています」

 昨年秋、東大はエース・宮台康平(現・日本ハム)ら4年生の活躍で3勝を挙げ、さらに30季ぶりとなる勝ち点1を奪取したが、今年の春は1勝も挙げることができなかった。秋のリーグ戦の目標は、すべてにおいてキャリアハイを達成することだ。

「昨年秋にマークした打率.308以上を目指すために、プルヒッターの長所を残しつつ、右方向にも強い打球を打てるように鍛えたい。それによって、対戦相手チームの守備位置や配球を手こずらせるのが狙いです。ホームランを2季連続で打ったので、秋も最低1本は打つ。できたら2本、3本と増やしたいですね。チームの目標は、まず1勝を挙げること。1勝すればチームに弾みがつき、勝ち点も見えてくる。そうすれば41季連続最下位からも脱出できるはずです」

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