甲子園の土を踏めなかった、プロも注目する超高校級の逸材7人 (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Kyodo News

 投手は挙げたい選手は何人もいるが、グッとこらえて3人に絞った。

 まずは、習志野の右腕・古谷拓郎(182センチ、78キロ/右投右打)。なんといってもフォームが美しい。「右のオーバーハンドなら、こんな風に投げてほしい」という無理のない投げ方で、球速は140キロ前後と驚くような数字が出るわけではないが、多くの打者が差し込まれる。おそらくストレートの質が高く、ベース付近で加速するイメージなのだろう。

 変化球も、スライダー、カーブはきちんとした球筋を持ち、フォーク、チェンジアップと抜いたボールも投げられる器用さも光る。バランスのよさは、間違いなく高校生トップクラスの右腕だ。

 古谷とは対照的に、"剛腕"なら倉敷商の引地秀一郎(187センチ、84キロ/右投右打)だ。

 昨年のいま頃、すでに150キロ近いストレートを投げていたが、当時はまだ投げてみないとわからないほど、調子に波があった。それがこの春から夏にかけて、コンスタントに実力を発揮するようになった。

 右腕がボールと一緒に飛んでくるのではないか、と思わせる猛烈な腕の振り。そこから放たれる剛球はもちろん、プロ顔負けのフォークも全国のファンに見てほしかった。

 最後は、西東京大会決勝まで勝ち進んだが、日大三の4番・大塚晃平にサヨナラ2ランを浴びた日大鶴ヶ丘のエース・勝又温史(あつし/180センチ、77キロ/右投左打)。

 一見、アーム式のように見えるが、豪快な腕の振りから、この夏150キロ台を連発。立ち上がりに不安はあるが、ここぞという場面でギアが入ったときのピッチングは別格だ。ストレートが来るとわかっていても、前に飛ばさせないスピードと球質は秀逸。

 それ以上に素晴らしいのが、捕手のサインに遠慮なく首を振り、自分でピッチングを組み立て、打者に向かっていこうとする姿勢だ。エースの矜持がほとばしる"面構え"も立派で、大舞台になればさらに力を発揮するタイプに見えた。だからこそ、甲子園のマウンドに立ったときにどんなピッチングを見せてくれたのか......残念でならない。

 甲子園出場の夢は果たせなかったが、3年間鍛え上げたスキルとフィジカルはこの次のステージで生きるに違いない。どこかの球場での再会を祈りたい。

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