2019年のドラフトで争奪戦必至か。
都市対抗で躍動した高卒2年目の逸材たち

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

 体の成長はまだ完全には止まっておらず、顔にはニキビも残る。それゆえ自分の肉体をコントロールしきれず、好不調の波もあるようだ。だが、大会前はずっと不調に苦しんできたにもかかわらず、本番前日には好調時の感覚を取り戻していたという。強運と見るべきか、本番に強いと見るべきか。いずれにしても悪いことであるはずがない。

 NTT東日本戦では2イニング目に桝澤怜に本塁打を被弾したが、それもまた勉強だ。

「前の回はカットボールが良かったので、カットでいくか真っすぐでいくか迷って投げた真っすぐを狙われてホームランにされました。外一点張りで来られたので......完敗ですね」

 まだまだ伸びしろを秘めた好素材。今後1年間の成長次第では、ドラフト上位候補に浮上しても何ら不思議ではない。

 他にもJR西日本に補強された河野竜生(JFE西日本)は、名門・東芝戦に先発して6回1失点の好投で勝利投手に。鳴門高時代は甲子園に3度出場するなど試合をまとめる能力の高さが光っていたが、社会人でも1年目から活躍。高卒2年目の今では、まるで社会人で何年もエースを張っているような風格を漂わせている。再現性の高いフォームから140キロ台中盤の速球とキレのある変化球を投げ分け、コンスタントに実力を発揮する。

 七十七銀行に補強された小木田敦也(TDK)も、注目された角館高(秋田)時代から順調な成長を見せている。身長は174センチと上背はないものの、現在は最速152キロまでスピードアップ。都市対抗では準優勝した三菱重工神戸・高砂戦にリリーフして1回無失点に抑えた。打者の手元で鋭く曲がるスライダーのキレがよく、将来的には則本昂大(楽天)のようなタイプに成長する可能性を秘めている。

 1963年には237チームあった企業チームも現在は94チームまで減り、高卒選手を採用する企業チームの数も限られている。そんな狭き門から早くも頭角を現してきた20歳前後の若者たち。彼らがこれからの1年間でどれだけの成長を見せてくれるのか。ロマンあふれる過程を丹念に追ってみると、きっと新鮮な刺激が見つかるに違いない。

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