2019年のドラフトで争奪戦必至か。
都市対抗で躍動した高卒2年目の逸材たち

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

 田嶋が抜け、投手陣の弱体化がささやかれる今季。都市対抗初戦の先発マウンドを任されたのが太田だった。堀井哲也監督は「一番調子のいいピッチャーでいきました」と抜擢の理由を語ったが、試合後には「若さが出たかな」と苦笑混じりに振り返っている。

 高い上背から角度を生かした太田の第1球は、捕手の渡辺和哉の構えたミットのはるか上を抜け、バックネットまで届く大暴投になった。太田は登板後、「緊張して初回からフワフワしていました」と淡々と振り返った。

 ストライクとボールがはっきりしており、三振か四球か......という不安定な投球内容。結局、2回1/3を投げたところで、堀井監督は「コントロールがうまくできていない」と交代を命じた。

 まだピッチング以前に覚えることは山積みながら、それでも底知れないポテンシャルは十分に見せつけた。このまま順調に伸びれば、来年のドラフト1位候補になるだろう。

 太田にこれからの課題を聞くと、こんな答えが返ってきた。

「ボール先行だと流れが悪くなるので、ストライク先行のピッチングができるようになりたいです」

 その太田が「あいつの方がずっといいピッチングをしたと思います」と語ったのが、同期の右腕・西田光汰(大体大浪商→JR東日本)である。若獅子賞こそ太田に譲ったものの、たしかにリリーフとしての安定感は際立っていた。

 西田の最大の武器は、そのマウンド度胸のよさにある。太田があれほど緊張した都市対抗マウンドでも、西田は「緊張しないタイプなので......」と物怖じしなかった。初戦の試合前には、先発登板する太田にこんな声をかけている。

「6回3失点くらいで帰ってこい。あとは俺が抑えてヒーローインタビューを受けるから」

 身長180センチ、体重80キロ。ストレートのスピードも140キロ台中盤と、太田に比べれば迫力はない。それでも体を縦に使って投げ込むためボールに角度があり、縦の変化球がよく落ちる。とくに縦のスライダーは絶品だった。

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