履正社らしからぬ苦戦は吉兆か。打倒・大阪桐蔭への道筋が見えた (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 汎愛との試合中、選手たちからは思いの込もった熱い声が飛び、夏特有の「負けられない戦い」のなかで、チームが一丸となっている雰囲気がヒシヒシと伝わってきた。そしてその空気感こそ、ここ数年、履正社に足りないと感じてきた部分でもあった。

 現在、夏の大会における両者の対決は、大阪桐蔭が10連勝中だ。初対決となった1997年、2度目の対戦となった1999年は履正社が勝利。しかし、2005年の夏に大阪桐蔭が勝利すると、以降は一度も履正社に敗れていない。秋と春はほぼ互角の戦いをしているにも関わらず、夏に限っては大阪桐蔭の圧勝である。

 この結果について、何人かの両校OBに話を聞くと、行き着くところは目に見えない部分での差だった。あえて言葉にするなら、「一体感」「一丸」「まとまり」......。それが生まれる理由を考えると、まず頭に浮かんだのが大阪桐蔭の寮生活である。

 単に寝食をともにしているから......というレベルではなく、心と体を鍛えながら、仲間との絆も深め、チーム一丸の空気をつくっていく場としての寮生活だ。

 ほとんどの選手が自宅から通う履正社にとっては、変えようのない環境のなかでもがいてきた部分でもある。だが、この夏の思いもよらぬ戦いのなかで、仲間を思う熱い気持ち、勝利への執念が生まれ、チームに一体感が生まれた。

 21日の試合後、4回戦、準々決勝までの組み合わせが決まった。履正社は24日に大阪電通大高と4回戦を戦い、ここに勝てば25日に春の大阪大会で大阪桐蔭をあと一歩のところまで追い詰めた寝屋川と春日丘の勝者と対戦。大阪桐蔭は24日に常翔学園、勝てば25日に金光大阪と同志社香里の勝者と対戦する。

 北大阪には他にも実力校や伏兵が揃い、先の読めない戦いではある。しかし、両校とも勝ち上がり、準決勝以降での対戦が実現したとすれば、これまでとは違う状況での"2強"の戦いは要注目である。

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