中村奨成ともうひとりの覚醒。「カチカチバット」が悩める球児を救う (5ページ目)

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • photo by Kyodo News

 昨夏の"中村フィーバー"が落ち着きを見せ、供給が間に合いかけていたとき、ユーチューバーが動画でカウンタースイングを紹介したことで人気が再燃。現在も品薄の状態が続き、嬉しい悲鳴と同時に「多くのお客さまに待っていただいている状況。どうやったら納期を短縮できるのか」と頭を抱える日々が続いている。

 勢い衰えぬカウンタースイングだが、野田には懸念もある。

「最近、インターネット上に『カウンタースイングを極めた』と豪語する人や、『使い方を教えます』と語るカウンタースイングの"先生"なる人がいるのが気になっています。開発者として言わせてもらうと、『音が1回鳴った!はい、終わり!』といったような浅いものではありません。むしろ音1回のスイングを手に入れてからが本当のスタートなんです。

 使い捨てのようなことはせず、じっくり向き合ってほしい。インターネット上でカウンタースイングの使い方を教えている人のなかに、私が公認している人物はいません。強いて言うならば、約5年間ともに仕事をしている生野武史氏が私に次いで理解できている存在。次点で、まだまだ未熟ではありますが、ここ最近カウンタースイングを熱心に勉強しているユーチューバーのクーニン氏でしょうか」

 こう警鐘(けいしょう)を鳴らすと同時に、全国に広がるユーザーにメッセージを送る。

「私個人としては、野球をやる以上、最高の結果であるホームランにこだわってほしい。もっとも試合の流れを変える力があって、チームのみんなを笑顔にできるのがホームラン。試合で打てば、一生記憶に残るし、家族を喜ばせることもできる。自分自身が経験して、よくわかりましたが、子どものホームランを見ると、親の疲れや今までの苦労も全部吹っ飛びます(笑)。

 今は品薄の状態ですが、高校1、2年生なら、冬の練習までにはお届けできます。高校野球はもちろん、その後の野球人生を含めて、末永く取り組む価値があることは、開発者の私が保証します。そして、カウンタースイングと向き合う時間が、成長のきっかけ、手助けになれば、これ以上の喜びはありません」

 子どものホームランが見たい――。野球少年の親の誰しもが持つ親心をきっかけに、さまざまな出会いが重なり合い、昨夏に大ブレイクしたカウンタースイング。このバットと向き合い、野球人生を切り開く者が今後も現れるはずだ。 

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