ひっくり返るぐらいの驚き。
星稜の1年生・内山壮真は「モノが違う」

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 高見博樹●写真 photo by Takami Hiroki

 これだけ打てるバッターなら、スイングしたいに決まっている。まして上級生を差し置いてレギュラーとして試合に出ている1年生。その上、3番という大役も担っている。「打ちたい! 打たなきゃ!」と気負い、ついつい誘い球に引っかかってもおかしくないのに、この泰然自若とした態度はなんなんだ。

 いつの間にか四球が4つ続いて、あの松井秀喜の3年夏の甲子園での5敬遠を思い出してしまった。ある意味、敬遠以上に価値のある4四球だと思った。しっかり見極め、もぎ取った"出塁"である。

 四球が4つ続いたあとの5打席目。ようやく打てそうな球が来ると、ひと振りで仕留め、左中間の一番深いところにフェンス直撃なのだから頭が下がる。

 バッティングが一流なのはわかった。あとは守備だ。"遊撃手"というポジションを守っている以上、守備でも魅せないと"本物"とはいえない。

 高岡商戦では強烈な打球をさばき、体勢が崩れながらも一塁へ矢のような送球でアウトにすると、その直後、今度は緩いゴロに猛然とダッシュしてきて、イレギュラーするもサッと反応して一塁で刺せるフィールディングのバリエーション。

 決勝の佐久長聖(長野)戦では、カットプレーでこんなシーンがあった。左中間を破られ、最深部のフェンスに届いた打球を追いかけていったセンターのすぐ近くまで距離を詰めた内山は、ボールを受けるとそのまま体を切り返し三塁へ。ボールはワンバウンドのストライク送球となった。

 ボールを受けてから送球するまでのスピードと精度の高さ。肩の強さはもちろん、体のバランス、鋭敏な野球勘......すべてがパーフェクトだった。

 かれこれ50年近く高校野球を見ているが、このサイズの遊撃手で彼ほどのスケールの大きさと迫力を感じさせる選手はほかにいただろうか......。いくら振り返っても、内山のような選手は見当たらない。

 明豊高(大分)1年の今宮健太(ソフトバンク)を初めて見たときも、プレーのスピードと瞬発力に驚愕したが、バッティングに関しては内山ほど圧倒的な迫力はなかった。

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