神奈川屈指の快速左腕を育てた、
「豪華すぎる2人のコーチ」の正体

  • 高橋博之●文 text by Takahashi Hiroyuki
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

「部員たちは石井さんの現役時代を知らないので、"元プロ野球選手のおじさん"くらいの感覚なんですよね。それに石井さんも一緒に体を動かすタイプだし、面倒見もいい。部員たちはすごく質問しやすかったと思います。ただ、だんだんと馴れ馴れしくなっていくんですよ。こっちがヒヤヒヤするぐらい(笑)」

 石井が高校3年のとき、中丸監督は1年。「頼むから失礼なことだけはするなよ」とヒヤヒヤしたのは想像に難くない。

 矢澤に聞くと、石井からは技術的なこと以外にも、ケガをしない体づくりなどを教わったという。しかし、矢澤を県内屈指の左腕へと成長させたのは、石井の教えだけではない。

「堀田さんには多くのことを教えてもらっています」

 矢澤が言う「堀田さん」とは、長年、藤嶺藤沢と取引している堀田スポーツのオーナーを務める堀田一彦氏で、昨年4月から都合のいいときにグラウンドに来て、部員たちを指導している。

 投手出身の堀田は、藤沢商(現・藤沢翔陵)時代に甲子園に出場。専修大では日本代表に選ばれ。社会人野球のプリンスホテルでも活躍した。

 指導者としては専修大でコーチと監督を歴任し、専大北上高(岩手)を率いて甲子園に出場したことがある。その後、創志学園(岡山)でもコーチを務め、現在は環太平洋大で女子野球部の指導をしている。教え子には広島などで活躍した黒田博樹を筆頭に、多くのプロ野球選手がいた。

 堀田の指導は決して押し付けることはせず、最終的には選手の判断に任せるというもの。この指導法が矢澤の肌に合ったのか、堀田の考えを積極的に学ぶようになった。

「試合での考え方や配球のヒントもくれます。ストレートの調子が悪ければ変化球勝負。『そういうときはストレートでカウントを整えようとせず、入ったらラッキーと思って投げた方がいいよ』とか。最終的に勝つために何をすべきか、ということです」

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