名門相撲部で鍛えた逸材。
「ダルビッシュ2世」が挑む最後の夏

  • 高橋博之●文 text by Takahashi Hiroyuki
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 しかし、2年秋は県準々決勝まで勝ち進む。ベスト4をかけた山村学園戦は3回表から登板するも4回と5回に失点して、結局2-5で敗れた。とはいえ飛躍を期待するには十分な結果だった。

 3年春は思わぬかたちで終わってしまった。ワインドアップモーションを取り入れた米倉の投球は迫力を増し、2回戦、3回戦と1回もホームベースを踏ませることなくベスト8へと進む。対戦相手は再び山村学園だった。

 3回表二死二、三塁、カウント2-2。ピンチのマウンドで米倉はストレートをインコースに投げた。しかし意図とは異なり、ボールは捕手がジャンプしても届かないほど高めに大きくそれて先制点を献上した。

 この暴投で力んでしまったのか、米倉は連打を浴びてさらに2失点した。その後も球が高めにいくたびに鋭く打ち返され、結局0-7のコールド負けに終わった。雪辱を果たすつもりが返り討ちにあった。

 苦すぎる経験を糧に米倉は成長しようともがく。

「あのときは、自分が抑えてやり返そうと力ばかり入って、まったく修正できませんでした。自分のことばかり考えていて、チームを勝たせようという意識が完全に抜けていました」

 若生監督は夏の奮起を期待する。

「力を発揮する前に自滅した感じでしたね。夏には同じようなことはしないと思いますよ。成長したし、悔しさにまみれた。信じていますよ」

 埼玉栄は7月11日に細田学園を相手に初戦を迎える。甲子園に11回出場し、準優勝を2回経験した若生監督といえども気持ちは高揚する。

「100回大会だからといって、どこも甲子園に行きたいのは同じです。特に3年生は最後だから力も入るよね」

 そして続けた。

「米倉のボールはひとつひとつがいい。大会に向けて変化球のキレも高いレベルで安定してきたし、コントロールよく低めに集められる。全部が決め球になりますよ。そのなかで何にするかが重要。春はいい経験になっただろうし、最後の夏は頑張ってもらいますよ。本人も期するものがあるはず」

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