2018.07.05

スカウトが隠したがる2人。
岡山、富山に潜む怪腕は甲子園に現れるか

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 一方、富山の高岡商には、山田龍聖(りゅうせい/3年)という将来性の高いサウスポーがいる。引地が「剛」なら、山田はどちらかと言えば「柔」の部類。しなやかな腕の振りから放たれるストレートは、打者のバットの上をことごとく通過する。最速148キロの数字以上にボールの質の高さを感じさせる投手で、スカウトや高校野球関係者からは「ドラフト上位候補」という声も聞こえてくる。

昨年夏の甲子園を経験した高岡商の左腕・山田龍聖 中学までの軟式野球から高校の硬式野球に馴染むまでに時間がかかった。硬い縫い目に何度も爪を割り、ボールの大きさがフィットせず高めに抜けることも多かったという。しかし、時間をかけてボールを扱えるようになり、今までまったくやったことがなかった下半身のウエイトトレーニングに励むと、急激にスピードが向上。2年の6月には148キロをマークしている。

 決して知名度があるわけではないが、この投手はすでに甲子園のマウンドを踏んだことがある。昨夏の甲子園初戦の東海大菅生(西東京)戦、1対3という接戦の8回から投入された。だが、残した成績は1回1/3を投げて6失点という惨憺(さんたん)たるものだった。

「自信を持って臨んだのに、自分のせいで試合をグチャグチャにしてしまって……。先輩方が粘ってくれたのに踏ん張れなくて、悔しい思いだけが残りました」

 山田は昨夏をこう振り返る。当時から140キロを超えるストレートを投げていたが、強豪を相手に勝負できる変化球がなかった。山田は「あくまで真っすぐ主体にしたいですけど、変化球がないと勝てないことを学びました」と語る。

 春の富山大会では、たとえ登板機会がない試合でもブルペンに入り、カーブ、スライダー、チェンジアップといった変化球を入念に投げ込む姿が見られた。「先輩たちへの恩と、甲子園での借りを返したい」と山田は息巻く。

 山田の底知れない潜在能力を思えば、さらなる大化けは十分期待できる。高岡商の吉田真監督は言う。