150キロ超がズバズバ。日体大・松本航が大学日本代表のエースへ名乗り (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 フォームが固まらない時期があったのは、リーグ戦中に調整の強度をいろいろと試したからだという。それは目先の結果にとらわれるのではなく、未来の自分のために試行錯誤した前向きな挑戦だった。結果的にうまくいかないこともあったが、松本は「今後に生きるミス」と振り返る。

 そして、明らかな成長も見せている。わかりやすい部分では、ストレートの平均球速が上がっていることだ。

「今まで平均すると140キロ台前半だったのが、今は平均145キロくらいまで上がってきました。ストレートが速くなったのに伴って、速い球速帯の変化球がより生きるようになりました」

 松本のストレートは、ただ速いだけではない。日本体育大で1年春からレギュラーマスクをかぶる好捕手・馬場龍星(3年)はこう評している。

「スピードガンの数字は東妻さんのほうが速いんですけど、東妻さんはスピードガンの数字通りのスピード感で、『ドーン!』とくる。松本さんはスピードガンの数字以上の速い体感で『スパーン!』ときます」

 選考合宿では、日米大学選手権の使用球(アメリカ製)を使った。中にはいつもと感覚が違い投球に苦しむ投手もいるなか、松本は高い順応性を見せつけた。

「使用球で1週間くらい練習する時間もありましたから。日本のボールに比べて縫い目の山が浅くて多少滑りますが、あまり気にせず投げられました。アメリカは湿気がないから、より滑るのかもしれませんけどね」

 松本は決して威勢のいいコメントは口にしないが、言葉の端々から「自分を選ばずして誰を選ぶ」という自負が伝わってきた。そんな印象を本人に伝えると、松本は首を横に振って、意外なことを打ち明けた。

「つい4日前に大学の練習でシートバッティングに投げたんですけど、球速が143キロくらいしか出なくて『やばい、ダメだな......』と思っていたんです。でも、今日は紅白戦に出てくるピッチャーがみんなすごかったので、自分もその流れにちゃっかり乗れたような気がします(笑)」

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