貧打のプロ球団に朗報。大学選手権に3人のドラフト級スラッガー出現 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

「関東の大学が強いと言われますが、九州の大学でも勝てることを示したいと思って九州に残りました」

 鋭い眼光を真っすぐにこちらに向けて、岩城駿也(九州産業大)は力強く語った。福岡・東海大五(現・東海大福岡)出身の内野手。大学は系列の東海大ではなく、「九州を出るつもりがなかったので」と九州産業大に進学した。大学選手権では初戦で、その東海大といきなり対戦することになった。

春のリーグ戦で7本塁打、27打点という驚異的な数字を残した九州産業大・岩城駿也春のリーグ戦で7本塁打、27打点という驚異的な数字を残した九州産業大・岩城駿也 今春のリーグ戦では主軸として12試合で打率.469、7本塁打、27打点という、とてつもない成績を残している。当然、大学選手権でも徹底マークを受けた。第1打席では東海大先発・原田泰成(3年)から際どいコースを攻められ、8球投げさせたものの力ないセカンドフライに倒れた。

 しかし、リーグ戦で27打点を挙げた勝負強さはダテではない。1点を先制されて迎えた6回裏、二死三塁の場面では読みが冴えわたっていた。

「いい流れが来ていると思いながら打席に入りました。スライダーが2球外れていたので、真っすぐしかないと張っていました」

 インコース寄りのストレートを力強く弾き返すと、レフト前への同点タイムリーとなった。主砲の一打に勢いづいたチームは、優勝候補を相手に3対2と勝利した。岩城は「自分の結果は二の次で、チームが勝てたことがうれしい」と目を輝かせた。

 まるで天井から吊るされているかのように背筋とバットを真っすぐに立てた構えから、鋭くバットを振り抜く姿には「打撃職人」のムードが漂う。

「3年の春くらいからスイングスピードが速くなった感覚があって、インコースの真っすぐもきれいにさばけるようになりました。ボールを長く見られるようになって、ミスショットも減ってきたと思います」

 岩城はすでに6月22日から選考合宿が始まる大学日本代表候補に名を連ねている。地元で腕を磨き続ける、無骨な九州男児の名前が全国へと知れわたる日は、そう遠くないかもしれない。

◆スカウト陣の目がハート。大学選手権に「4カ月後のドラ1」がズラリ>>

◆あの左腕エースが引退を「全然悲しくない」と思うほど痛いヒジの故障>>

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る