貧打のプロ球団に朗報。大学選手権に
3人のドラフト級スラッガー出現

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 まるで別人みたいだ――。

 今春、そんな成長を見せたのは、大阪商業大の捕手・太田光(おおた・ひかる)だった。二塁送球タイムは1秒78を計測するなど、もともと守備力を評価されていた捕手だが、今春は打撃が開花。春のリーグ戦では13試合で24安打を放ち、打率.522、2本塁打と大暴れした。大学選手権でも天理大戦でライト方向へ2本の二塁打を放った。

春のリーグ戦で首位打者を獲得した大商大の太田光春のリーグ戦で首位打者を獲得した大商大の太田光 これまでの「打者・太田」には非力な印象が否めなかったが、今春4番に座る太田に非力感はまるでなかった。それどころか、柔らかく運ぶようなスイング軌道はまるで長距離砲のようだった。

 そのスイング軌道を見て、思わず太田に確認せずにはいられなかった。「"カチカチバット"を使っていますか?」と。すると太田は「はい、大学2年の冬から使っています」と認めた。

"カチカチバット"とは正式名称を"カウンタースイング"といい、芯から根元にかけて2つの重りがスライドするような構造になっている素振り用のバットのことだ。昨夏の甲子園で大会6本塁打の新記録を樹立した広陵・中村奨成(現・広島)が練習で使用していたことで話題になった。太田も広陵出身であり、その影響を受けていると容易に想像できた。

「カウンタースイングを取り入れたことでスイング軌道が変わりました。振り幅が大きくなりましたね」

 強打者特有のスイング軌道を身につけるとともに、昨秋からは「振る力をつけよう」と、1.5キロの重いバットで振り込むことでスイングスピードを獲得した。

「スイングが速くなったことで余裕ができて、バットコントロールと対応力が上がりました。逆方向(ライト)への飛距離も伸びるようになりました」

 太田には課題を見つけ、自分で考え、行動して解決する能力がある。プロで言えば嶋基宏(楽天)のスタイルがだぶってくる。

 進路は「プロ一本」ときっぱり。プロでレギュラーを狙える捕手は希少なだけに、ドラフト上位指名の可能性も十分あるだろう。

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