貧打のプロ球団に朗報。大学選手権に
3人のドラフト級スラッガー出現

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 関西の学生野球界で辰己の名前を知らぬ者はいない。リーグ戦では「外ばっかり」(辰己)の配球で攻められていた。

「インコースしか打てなかったので、外ばかり練習していました。逆方向を意識して打てば、バットは勝手に出てくるので」

 近畿学生野球連盟の奈良学園大も勝負どころでアウトコース攻めを選択したが、辰己は見事に攻略してみせたのだ。

 また、タイムリーを放った次の打席では、フルスイングで空振りした直後にサードの守備位置を見てセーフティーバントを決めるという小技も披露している。コメントだけでなく、プレーもつかみどころがない。

 そしてこの選手が魅力的なのは、見るたびに進化を見せつけることだろう。大学1年時はバットコントロールのうまい巧打者という印象だったが、年々スイングに力強さが増している。そんな印象を本人に伝えると、「トレーニングして体が大きくなって、それで飛距離が伸びました」という答えが返ってきた。

 たしかに、やや貧相に見えた下級生時の体つきから、ほどよく筋肉がついたように見える。だが、大学選手権の公式パンフレットに記載された数字は「178センチ、68キロ」。ドラフト候補としては、やや頼りない数値だ。見た目と数字にギャップがあることを伝えると、辰己はサラリと「それは古いデータですね」と語った。実際には、身長180センチ、体重74キロだという。

 自分の体を大きく見せようと数字を"サバ読み"することはあっても、実際よりも小さく伝わっているケースはなかなかない。もちろん、悪意があって下方修正しているわけではないが、辰己の公式プロフィールデータが更新されることを願いたい。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る