大学球界の「完全試合男」は、憧れの菅野が待つプロに向けてリスタート (3ページ目)

  • 高橋博之●文 text by Takahashi Hiroyuki
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

「甲子園の応援はすごかった。気持ちが一気に入って、初回から全力投球。しかも、ほとんどストレート。もう止まらなくなってしまいました。こんな投球では最後まで持ちません。試合が終わってから『なんであんな投球をしたんだ』と、いろんな人に散々言われました」

 青島はプロ志望届を出さず、東海大へ進学した。大学では完全試合を達成し、日本代表に選出されるまでに成長した。しかし、まだ理想とするエースを体現できていないという。青島が思い描くエースとはどのような投手なのだろうか。

「完全試合を達成したとき、気持ちの持ち方とかエースらしい投球とか、そういうものが少し見えてきました。でも、まだまだ完成途上。その感触をしっかり自分のものにしたい。防御率でいえば0点台。ホームを踏ませないことが目標です」

 気持ちに任せて投げない。冷静に、しかし勝負どころでギアを上げる。その姿は高校、大学の先輩にあたる菅野智之(巨人)とだぶる。青島は一度だけ菅野と会ったことがある。

「菅野さんが浪人されているとき、東海大相模の練習のグラウンドにやってきました。そこでカットボールを教わりました。そのとき僕は高校1年で、すぐにマスターしたわけではありませんが、今ではなくてはならない球種です」

 大学に入って、菅野のすごさをあらためて思い知らされた。菅野は1年秋から4年秋まで通算37勝を挙げ、敗れたのは4度だけ。防御率0.57と圧倒的な数字を残し、誰もが認める絶対的エースだった。

「もちろん菅野さんのような球を投げることはできません。だけど勝利という目標は同じです。話をうかがう機会があれば、ゲームのなかでの修正の仕方、力の抑え方、そして豊富な経験そのものをうかがいたいです」

 しかしその機会は、"140キロカルテット"のひとり、吉田に先を越されてしまったと青島は苦笑する。

「1月に吉田から電話がかかってきて『ハワイの自主トレ、最高でした!』と自慢されました。吉田は菅野さんと一緒に自主トレをしたみたいで。吉田も聞きたいことはいっぱいあったと思います。本当にうらやましかった(笑)」

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