都立高の野球監督にジェネレーション闘争。甲子園を叶えるのは誰だ? (5ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

 現任の八潮には、さまざまな事情を抱えた生徒もやってくる。ある生徒の「家帰ってもメシがないんですよ、先生」という言葉に絶句することもあった。それでも、鈴木監督は「子どもはいつ、どこで変わるかわからない」と力説する。

「教員は今ではなく、未来を見せることが大事だと信じています。『お前は絶対にこうなれる!』と。八潮の生徒には、軟式野球の全国大会を絶対に狙おうと言っています。常に大きな目標を持っていれば、本番でドギマギしないようになる。それはサラリーマン時代に大きな仕事を任されたときに学びました」

 都内には他にも前出の芝兄弟や、有馬監督の教え子で2001年夏に自身も甲子園に出場している内田稔監督(都城東)、茶川剛史監督(都淵江)といった有力な若手指導者がいる。

 実力派、個性派とバラエティに富んだ指導者が控えるが、TKBに初めて参加した有馬監督はどんな感想を持ったのだろうか。本人に聞いてみると、こんな"有馬節"が返ってきた。

「まだ圧が弱いな。危惧しているのは、若手の会だと野球だけのつながりにならないか? ということ。僕が若い頃は体育科の他種目の先生とのコミュニケーションで鍛えられましたから」

 そして最後にはやはり「実際にグラウンドに来てくれれば、一方的ではなくいろんな話ができますからね」と、若手指導者の挑戦を期待した。すでに、練習に訪れた若手指導者もいるという。口では厳しいことを言いつつも、有馬監督にとっても若手指導者との交流は大きな刺激になっているようだ。

 TKBを主宰する都新宿の田久保監督は言う。

「我々は有馬先生をはじめとしたベテラン監督が築いた土台に感謝しつつ、挑戦していかないといけないと思っています。それと同時に、これからは野球の普及も真剣に考えていかなければなりません。ただ若手の仲良し集団ではなく、野球の10年、20年先を考えて活動していきます」

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