都立高の野球監督にジェネレーション闘争。甲子園を叶えるのは誰だ? (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

 壇上に上がった有馬監督は、この日集まった50人の若手指導者を前に、こう述べた。

「今の若い先生はかわいそうだと思います。今は教師が管理され、支配される時代がきている。学校のお偉いさんには『部活はいらない!』と考える人もいる。これから先、いろんなイヤなことを言われると思う。でも、仲間同士で協力して『そんなことには負けない!』と乗り越えてほしい」

 そして有馬監督は、自身の指導者生活について語り始めた。初任の定時制高校ではボートピープルだったベトナム人の生徒に『先生、もっとちゃんと授業をやってくれ』と言われて心を動かされたこと。都城東に異動しても希望の野球部ではなく男子バレーボール部を任されたが、ガムシャラに指導して体育科の教員仲間から認められたこと。念願の野球部監督になり、数々の強豪私学に体当たりするかのように胸を借りて力をつけたこと。甲子園出場を決めた日、学校のグラウンドに戻って野球部以外の生徒を含め全員で校歌を歌ったこと......。

 そして、有馬監督は講演の最後をこんな言葉で結んだ。

「本当に、ウチのグラウンドに来てください。僕はなんでも教えますよ。人に教えるということは、その上に行かないといけないということ。だから、自分にとってもプラスになるんです」

 講演会が終わると、場所を飲食店に移して交流会が始まった。有馬監督のテーブルには絶えず若手指導者が集まり、有馬監督を質問攻めにする光景が見られた。

 有馬監督は辛口だが、このTKBには、都内の有望な若手指導者が何人も参加している。その中の数名を紹介しておきたい。

 都小岩の西悠介監督は今年で32歳になる。早稲田実、早稲田大を経て教員になった。2017年のTKBで前出の有馬監督のコメントが載った記事が配布され、真っ先に練習試合を申し込むべく、有馬監督に電話したという。

「ずっと有馬先生と勝負できるチームを作りたいと意識していたので......」

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