熱気と哀愁の「村田修一フィーバー」に栃木の選手、ファンが思うこと (3ページ目)

  • 阿佐智●文・写真 text&photo by Asa Satoshi

 一方、対戦相手は村田をどう見ているのだろうか。同地区のライバル・新潟アルビレックスでサードを守る樋口龍之介は「別に気にしていません」と言い、こう続ける。

「そりゃ、すごい選手っていうのはわかっていますけどね。ただ、村田さんひとりで勝てるわけでもないですし......。特に参考にしていることもないですが、村田さんの打席はしっかり見ています」

 同じ土俵に立てば経歴は関係ない――あえて、自分にそう言い聞かせているようにも思えた。

 実際に誰よりも"村田効果"を感じているのはファンだろう。巨人ファンの多い栃木という土地柄もあって、村田の入団にファンは沸き立った。

 タクシーに乗って行き先を告げると、まず村田の話題から始まる。またBCリーグは試合の模様をネット中継しているが、この視聴者も昨年に比べて大幅増とのこと。

 さらに今年の開幕戦は、チームが本拠地を置く小山(おやま)市の5500人収容の球場で行なわれたが、当日は駐車場がいっぱいになり、渋滞で前売り券を購入したにもかかわらず、球場にたどり着けなかったファンもいたという。まさに今、栃木ではちょっとした"村田フィーバー"が起きている。

 このフィーバーはしばらく続きそうだ。栃木ゴールデンブレーブスは、公式戦として5月11日から3連戦で巨人三軍との交流戦を迎える。球団はこのシリーズを"男・村田祭り"と題して、村田の"古巣退治"を盛り上げようと様々な企画を練っている。

 しかし、こうした盛り上がりは村田にとって必ずしも本意ではないだろう。野球好き女子で結成された栃木のチアリーディングチーム「ゴールドラッシュ」のメンバーも、憧れの存在である村田を前に複雑な表情を浮かべる。メンバーのひとりはこう語る。

「もちろん、間近で見ることができて嬉しい気持ちもあるんですけど......。本来はNPBで活躍して当然の選手ですから。半分はさみしい気持ちですね」

 独立リーグは村田修一のいる場所ではない。そのことは本人のみならず、球団、選手、ファンの誰もがわかっていることだ。近い将来、村田の姿が再びきらびやかなカクテル光線に包まれることを切に願う。

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