あの「人的補償」の元チームメイトに続け。月給10万円から挑むプロ (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 市川光治(光スタジオ)●写真 photo by Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)

 今帰仁中から北山高へ進んだ仲間7人のうち、今も野球を続けているのは平良と神谷、キャプテンだった仲里の3人。野球をやめた4人のうち、3人が消防士として地元で働き、残りの1人は実家の農家を手伝っている。

「仲里はもう上(プロ)は目指さずに、今年限りで現役を退くと言って最後のシーズンを頑張ってます。他のみんなが公務員になって、安定した職業にどんどん就いていくのを見てると、正直、焦りはありますよ。でも、そういう人生は波でいったら安定した、穏やかな海じゃないですか。プロに行けば荒海の中、ドーンと上がることもある。僕は、そういうスリルというか、一発逆転の醍醐味が人生に欲しいんです。

 独立リーグに来て、NPBの二軍と試合をする機会は多いんですけど、そこまでレベルが高いなとも思いませんし、そんなに差は感じません。ミリオンスターズの雰囲気も、希望に満ち溢れているというか、『オレは上に行くんだ』ってみんなが刺激し合ってますし、『オレは無理だ』という選手もいない。独立リーグだからといって下手くそな選手はいないんです」

 今シーズンから、ミリオンスターズの監督はファイターズでの11年間で82勝を挙げた左腕、武田勝が務めている。武田は神谷について、こう話していた。

「野球に対するセンスはあると思います。足は速いし、肩も強い。ただ、遊び心がないんです。独立リーグにいる選手は技術と運、あとひとつ、遊び心が足りない。真面目にやってきた野球で結果が出なかった。だったら逆の発想をしてみなさい、と。真面目にコーナーを突いてもフォアボールじゃ意味がないんだから、ど真ん中に投げる遊び心があってもいい。

 そうやって野球の楽しさをもう一度考え直すことも大切だということは選手たちに伝えています。神谷君も去年は結果を出せない自分にモヤモヤして、苦しんでいた。言われたことを鵜呑みにするんじゃなくて、自分を表現するために言われたことをうまく変換して、それをプレーに生かしてほしいんです」

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