「サニブラウンに勝った男」は
2年後のドラフトに向けて出塁率を磨く

  • 松本英資●文 text by Matsumoto Hidesuke
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

"戦国東都"に2年生ながら注目したい選手がいる。「サニブラウンに勝った男」という肩書きを持つ中央大学野球部の五十幡亮汰(いそばた・りょうた)だ。

 2013年8月、埼玉県行田市の長野中学3年生のときに、全国中学陸上競技選手権大会100mと200mでサニブラウン・アブデル・ハキームを破り優勝。陸上選手として輝かしい実績を残した。

快足を武器に1年春からリーグ戦に出場している五十幡亮汰快足を武器に1年春からリーグ戦に出場している五十幡亮汰

 ただその一方で、五十幡は野球においても非凡な才能を開花させる。東京神宮シニアのトップバッターとして活躍。ジャイアンツカップにも出場し、チームを全国3位に導いた。

 その活躍を見た当時U15日本代表の鹿取義隆監督(現・巨人GM)は「将来、足だけで客を呼べる選手になれる」と絶賛。U15アジアチャレンジマッチ2013の日本代表に選ばれ、国際大会も経験した。

 チームメイトと一緒に喜びを分かち合う団体スポーツの醍醐味に魅了された五十幡は、陸上競技生活に終止符を打つ。目標を甲子園に絞り、野球強豪校の佐野日大(栃木)に進学。だが、悲願の甲子園出場を果たせないまま、五十幡の高校3年間はあっという間に過ぎていった。

 一方、五十幡に敗れたサニブラウンは、2015年の世界ユース陸上選手権大会で100m、200mを制し二冠達成。昨年は世界陸上選手権大会(ロンドン)100m予選で自己ベストの1005をマーク200mでは決勝進出を果たし、2年後に開催される東京オリンピックのメダル有力候補になるまで成長を遂げた。

 世間の注目という面では、両者の立場は完全に逆転した格好となった。それでも五十幡は2年後のドラフトを目指し、黙々と目の前の課題に集中している。

 昨年、中央大に入学早々、ベンチ入りメンバーに抜擢された五十幡だったが、足のケガもあり、満足のいくシーズンを過ごせなかった。今年のリーグ戦が始まる前、五十幡はこう語っていた。

「今のところケガもなくいい感じで調整できていますが、まだ鍛え足りない。まずは出塁率を上げて監督から認めてもらわないと......。どうすれば1回でも多く塁に出られるか。その課題を克服するため、集中的に練習しています」

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