勝負勘は「鈍っとる」。71歳名将が
大阪桐蔭にリベンジする日はくるか

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 もうひとつは、根来を使うタイミングだ。6回まで2失点と好投していた先発の池田陽佑(ようすけ)は7回、先頭打者に四球を与えたところで降板。その池田に代わりマウンドに上がったのが平田だった。平田は疲労を隠せず、その回にタイムリーを許すと、さらに8回にも2点を失った。その後、平田のあとを受け無死一塁から登板した根来は最速137キロをマークし、センターフライ、セカンドゴロ併殺打で無失点に抑える好投を見せた。

「どうせ打たれるなら、怖いもの知らずの根来を行かせればよかった」

 さらに高嶋監督は、バントのしぐさをしながら、こうも言った。

「作戦にしても、桐蔭を倒すには常道でいきすぎた。走らすとか、エンドランとか......」

 2回、無死一塁の場面では送りバントを命じるも失敗。3回は一死一塁から送らせたが、得点にはつながらなかった。久しぶりにやってきた甲子園の決勝戦。そこにたどり着くまで死闘を制してきたが、まだかつての冴えは戻っていなかった。

「勘? 鈍っとるなぁ......」

 3回戦から準決勝までは3戦連続14安打以上。準々決勝、準決勝は2戦連続2ケタ得点。強打の名をほしいままにした智弁和歌山の強力打線が戻ってきた。それに呼応するように甲子園のファンも智弁和歌山の逆転劇を期待した。あとは、名将の勘さえ戻れば......。

「このままじゃ、やめれんでしょう。桐蔭に勝つまではな」

 高嶋監督が言う「勝つ」は、近畿大会ではない。もちろん、甲子園だ。そのときこそ、2000年夏以来の大旗が待っている。

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