東海大相模に「伝説の1・2番コンビ」
再来。バントせずに打ちまくる

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 聖光学院バッテリーとしては、頼りにしていた配球の軸を先頭打者の初球に打たれては「読まれている」と勘ぐってもおかしくない。より厳しいコースを狙おうとした結果、かえってコントロールを乱して四死球が増えてしまう。

 そんな東海大相模にとっての好循環を引き出したのは、間違いなく小松の積極性だった。小松は言う。

「野球にとって初回は大事なイニングなので、その先頭バッターとして自分の持ち味である積極性を出せたのはよかったと思います」

 この試合は小松の働きが特に目立っていたが、東海大相模には「アグレッシブ・ベースボール」のもうひとりのキーマンと見るべき選手がいる。それは小松に続き2番を任される山田拓也だ。

 東海大相模が6対1と5点リードした2回裏、再び先頭打者の小松が、今度はセンターへとヒットを放つ。そして打席に入ったのが山田だった。

 小松が172センチ、67キロとやや小柄な体型をしているのに対し、山田は168センチ、63キロとさらに小さい。一見、地味に見えるが、勝負どころで実にいい仕事をする好プレーヤーなのだ。

 東海大相模はノーアウトのランナーが出ても、無条件にバントで送るような戦法はとらない。もはやお家芸となったヒットエンドランなど、多彩な選択肢でバッテリーに揺さぶりをかけてくる。

 この場面でも、山田は強攻に出てライトへ二塁打を放つ。ライトからの返球が逸れる間に小松が生還し、東海大相模はこの回に3点を追加して試合を決めた。

 試合後、山田はこんなことを語っている。

「門馬監督からは『小松と2人で1点を取るくらいのつもりでやれ』と言われています」

 その言葉を聞いて、強烈な記憶が脳裏から呼び起こされた。それは7年前、東海大相模が春のセンバツを優勝したときの記憶だ。

 1番・渡辺勝(現中日)、2番・臼田哲也(現東京ガス)という、センバツ史上最高と思えるような1、2番を擁したチームだった。

 何しろ2人合わせて48打数22安打を記録し、送りバントはゼロ。大会初戦の関西(岡山)戦では、初回に渡辺を一塁に置いて、臼田が鮮やかにヒットエンドランを決めて流れを呼び込んだ。このプレーに象徴されるように、2人はアグレッシブ・ベースボールの体現者だった。

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