4タコ&初戦敗退で甲子園を去る
「未来の怪物スラッガー」が残した言葉

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 今春のセンバツで新たなスターが誕生するなら、東邦(愛知)の石川昂弥(たかや/2年)かもしれない......。そんな可能性を感じていた逸材が3月26日、初めて甲子園の土を踏んだ。

 身長185センチ、体重81キロの見事な体躯。右打者ながらライト方向にもスタンドインできる長打力。小学6年時には中日ドラゴンズジュニア、中学時代はジュニアオールジャパン(NOMOジャパン)に選出され、順調にステップを踏んできた未来の怪物スラッガー候補だ。

花巻東戦は無安打に終わったが、強肩強打の内野手として注目を集める東邦・石川昂弥花巻東戦は無安打に終わったが、強肩強打の内野手として注目を集める東邦・石川昂弥 しかし、結果から言うと石川はまだスターになるには早かったようだ。4番・サードで出場した1回戦、石川は花巻東(岩手)の軟投派左腕・田中大樹の前に4打数無安打に終わった。

 凡フライ2つに、凡ゴロが1つ。そして貧乏くじのような守備妨害が1つ......。それが、石川が残した甲子園での全成績だった。

「1打席目(セカンドフライ)は芯で捉えられたので感じは悪くなかったのですが、2打席目に守備妨害を取られてしまって、動揺したのかもしれません」

 試合後、石川はそう振り返った。

 守備妨害のシーンはこうだ。4回表、無死一塁の状況で石川が打席に入る。カウント2ボール1ストライクから、一塁走者の洞田大翔(ほらた・ひろと)がスタートを切った。花巻東・田中の投球は石川のインコース低めのボールゾーンへと向かっていく。足元のボールを見逃した石川は、つんのめって右足を前に出してしまう。この行為が捕手の送球動作を邪魔したとされ、石川は守備妨害でアウトになった。

 この守備妨害には伏線があった。今春、スランプに陥った石川は森田泰弘監督の付きっ切りの指導を受け、前足(左足)を極端に踏み込む練習を重ねていたのだ。花巻東戦の試合前、石川はこんなことを語っていた。

「実戦がない冬の間に、前足が開いた状態でステップして、外からバットが回るようなクセがついてしまっていたんです。それを矯正するために、前足をホームベースまで踏み込む練習をして、意識づけをしました」

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