原辰徳を超えたスラッガーが語る「東海大相模の4番を打つということ」 (3ページ目)

  • 高橋博之●文 text by Takahashi Hiroyuki
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 直後の5回裏、森下はやや高めにきた甘いボールを鋭くスイングした。金属音とともに打球は一瞬にして保土ヶ谷球場のレフト場外へと消えていった。この一打で重い空気をはねのけ、試合の流れを再び東海大相模へとたぐり寄せた。その後も危なげなく試合を進めた東海大相模が7-3で勝利した。

 流れを変える一打を放った森下は言う。

「相模の4番の仕事とはこういうことなんだと、自分のなかで初めて納得できました。ジリジリと押されているときこそ、自分のバットでチームを奮い立たせる。チームをひとつにする一打を打つためには、どのような心構えをすべきかが見えてきました」

 この春季大会は横浜を倒して神奈川県を制するも、関東大会は準優勝。そして甲子園をかけた夏の神奈川大会は決勝で横浜に敗れた。

 新チームとなり迎えた秋季大会。再び神奈川大会を制するも、関東大会準決勝で中央学院(千葉)に2-3と惜敗。それでも秋の戦いぶりが評価され、センバツの切符を手に入れた。森下にとっては4回目のチャレンジでようやく目標が叶った。

 センバツを目前に控えた3月14日現在、森下の通算本塁打数は46本にまで伸びた。この数字は偉大なOBである原辰徳氏を抜き、東海大相模歴代2位の記録である。ちなみに1位は大田泰示(日本ハム)の65本。森下は東海大相模のレジェンドたちが並ぶ世界に突入した。しかし、森下に気負いはまったく感じられない。

「高校時代の大田さんについて聞いたことがあります。木製バットで次々とホームランを打っていたって。凄すぎるなとは思いますが、憧れという感情はないです。これはほかのOBの方でも同じです。憧れるというならば、特定の選手というよりも歴代の選手たちが積み重ねてきた"4番像"そのものです。打ってほしいと思うときにこそ打てる。チームが苦戦しているときに突破口となる一打を打つ。そのように先頭に立ってチームを勝ちに導く選手になりたいと思っています」

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