原辰徳を超えたスラッガーが語る「東海大相模の4番を打つということ」 (2ページ目)

  • 高橋博之●文 text by Takahashi Hiroyuki
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 この夏の悔しさが、森下を成長させた。なにより"東海大相模の4番"の重さと向き合える選手になった。

「それまでも4番として多くの人から注目されているのはわかっていました。そうした視線に打ち勝って成績を残せばいいと思っていましたが、相模の4番は違う。打つことによって試合の流れを引き寄せる。そしてチームを勝たせるのが相模の4番なんです。高校1年の夏、僕がスタメンを外されたのは成績が悪いからではなく、"相模の4番"の意味をわかっていなかったからだと思います」

 森下はチームに流れを引き寄せ、勝利に導く一打を求め続けた。そして2年になり、森下はついにイメージに近い一打を放つ。春季神奈川大会準決勝の桐光学園戦だった。

 4-0と優位に試合を進めていた5回表、無死一、二塁のピンチで桐光学園の打者が左中間に大飛球を打った。「捕れない球じゃない」。そう判断したセンターの森下は俊足を飛ばして打球を追った。回り込みながら捕球して、勢いのままフェンスに激突。森下は衝撃で倒れたが、ボールはすぐにフォローしていたレフトから内野へと渡った。

 すでに大きく飛び出していた桐光学園の走者はふたりとも帰塁できず、トリプルプレーが完成した。ところが......判定が覆(くつがえ)ったのだ。森下は落球したとみなされ、二塁走者はホームイン、一塁走者は二塁進塁。1点を失い、引き続き無死一、二塁という状況から試合は再開した。

 その後も1点を献上し、5回表を終わって4-2。点差は2点に縮まり、試合の流れは桐光学園にあった。

「今でもあのプレーは、僕の中では落球していないです。それくらい自信のあるプレーでした。ただ判定は違いました。トリプルプレーで流れを断ち切ったはずが、1アウトも取れずに失点して、なおもピンチ。この状況にチーム全体が必要以上に気負ってしまった。相手に流れがいってしまったなか、『冷静に』と思っても力が入ってしまいます。この雰囲気をひっくり返すにはどんな打撃をすべきか......そう考えながら次の打席に入りました」

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