「浜高の野球で勝て」。兄の想いを胸に、
和田毅の弟が古豪復活に挑む

  • 井上幸太●文・写真 text&photo by Inoue Kota

 様々な思いが交錯した初陣は9-4で勝利。一時は同点に追いつかれたものの、実戦不足を感じさせない戦いぶりでの初戦突破だった。最終的にその夏は8強進出。さらに2017年春、同年夏は連続で4強まで勝ち進み、着々と古豪復活への歩みを進めている。

 約2年間母校を率いていくなかで手応えもあるのでは......と投げかけると、こんな答えが返ってきた。

「甲子園に出ていた時代の浜高には、相手が勘ぐって自滅することもあるほどの『怖さ』があった。体格は今の選手たちの方が勝っているんですけど、まだそういった怖さがありません。そこを取り戻すためには練習の段階から『何のためにやるのか、何につながるのか』と目標や意図を理解して取り組まなければならないですし、『監督に言われなくてもやる』というような自立した姿勢も必要です。技術面以外にもそういった部分がまだ足りてないですね」

 勝負の分かれ目を見逃さず、必要なプレーを実行し、取るべき得点、奪うべきアウトを積み重ね、試合に競り勝つ。野球の「機微(きび)」を感じ取っているかのような試合運びを見せていたのが、往年の浜田高だった。

「浜高の野球は打ち勝つ、ねじ伏せるというよりも『こうしたら負けない』という野球。日頃から目に見えていることだけでなく、その奥にあるものを考えるクセが身につけば、試合のなかでも1球、ワンプレーの意図を感じ取ることができるようになるんじゃないかなと」

 復活を目指すなかで、もうひとつ気掛かりなことがある。現在、浜田高の野球部員数は2学年合計で16人。現2年生の入学時に対外試合禁止処分が重なっていた影響があるとはいえ、名門校の部員数としては寂しい数字だ。この「選手確保」も和田が危惧している部分だ。

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