熊本の公立校に伝わる「PLの遺伝子」。62歳の新監督が描く壮大な夢 (3ページ目)

  • 加来慶祐●文・写真 text&photo by Kaku Keisuke

 試合前のシートノックでは、投手も加わり投内連係を入念に行なうようにした。これも「ほかのチームがやっていないことをして、驚かしてやろう」という渡邉のアイデアだ。

 今年の夏を最後に秀岳館高校の監督を退任した鍛冶舎巧(かじしゃ・たくみ)とは、社会人野球で同時期に監督をしたこともあり、また全日本のスタッフとしては同じ釜のメシを食った仲だ。監督就任当初、菊池高は半年間の対外試合禁止処分を受けていたが、「ナベさん、(処分が)解けたらすぐにやろう」という鍛冶舎の誘いもあって、処分解禁の最初の試合は秀岳館と行なった。

 鍛冶舎は次のような言葉で渡邉に太鼓判を押す。

「さすがに一流のプレーをつぶさに見てきた人物なので、基本に忠実といいますか、当たり前のことをやり通せる指導者ですね。公立校の難しさはあると思いますが、これからの熊本をリードする存在になってくれると期待しています」

 鍛冶舎と入れ替わるような形で熊本に出現した62歳の新人監督は、かつて鍛冶舎が秀岳館の監督就任当初にぶち上げた「3年で日本一」に勝るとも劣らない壮大な野望を抱く。

「秀岳館と試合をしたとき、相手の選手たちが『菊池高校って県外のチーム?』と聞くわけですよ。同じ県にあっても、それほど無名の存在だったんです。そのときに強く思いました。甲子園に出て『熊本県に菊池あり』ということを知らしめたいと」

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