「左投げサード」で快進撃。日立一高は21世紀枠で甲子園まで届くか (3ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 だが、清水はこれらの難しい動作を器用にこなせたという。中山監督は清水のセンスに舌を巻いた。

「練習すべきだったのは、セカンドベース付近のプレーと、セカンド前のプッシュバント。でも、清水はプッシュバントに対して前に出て、捕ってからターンして一塁に投げる動きを1球目からできた。クルッと回ってから投げるプレーで、ミスしたことを見たことがありませんから。空間を認識する能力、体をバランスよく扱う能力が高いのでしょうね。内野手として一流の力を持っていると感じました」

 さらに左利き内野手用のグラブが市販されていないという問題もあったが、清水は「古いピッチャー用のグラブを使っています。柔らかくて使いやすいんです」と対処した。通常、左投げの野手は送球に強いシュート回転がかかることが多いが、清水の送球は回転がきれいということも特徴的だった。

 1年秋は主にセカンドとして出場。そして2年秋はサードとして出場する。サード起用の理由を中山監督はこう明かす。

「秋はどのチームも完成していませんから、守備で揺さぶられたくなかったんです。それでサード候補の選手(右投げ)と清水のバント処理のタイムを計ってみたら、不利なはずの清水のほうが速かったんです」

 清水は投手としてもプレーするため、背番号は1。だが、登板しないときはサードを守ることになった。

 今秋の茨城大会、試合前のシートノック中にスタンドでは高校野球ファンのこんな声が飛び交っていた。

「あれ、サードに左利きがいるよ?」

「ピッチャーがサードでノック受けてるんじゃねぇの?」

「ふざけてるのかねぇ?」

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