町の野球少年がドラフト上位候補へ。名将と歩んだ本田仁海の3年間 (4ページ目)

  • 高橋博之●文 text by Takahashi Hiroyuki
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

「いつでも試合できますよ」と土屋監督が言う。本田が帽子を脱ぐと頭もきれいに丸く刈られていた。気合が入っていると思いきや、土屋監督が笑って理由を教えてくれた。

「実はちょっと前に2日連続寝坊したので、叱ったんですよ。さらに上を目指す同学年の選手たちは今こそ必死に練習している。そんな気持ちでいいのかって。そうしたら次の日にスポーツ刈りを坊主にして。動きも見違えるほどよくなりました」

 日大高戦で夏が終わったことについて、本田は「悔しくて仕方がない」と今も無念さを隠さない。その思いを胸にテレビで観戦した甲子園に、昨年までと違うものはあったのだろうか。気になった高校や選手はいたか聞くと、秀岳館(熊本)と即答した。

「川端健斗投手と田浦文丸投手、この2人を相手に投げたかったです。簡単に点を取れないでしょうから。だからこそ、そういう試合でマウンドに立ち続けたかったです」

 一番気になるのはやはり投手。そして本田は次のステップへの思いを続けた。

「僕は少年野球チームでエースになれなかったし、中学校も県大会1回戦で負けました。土屋監督からは『実績も何もないんだから、一生懸命野球を覚えて練習するだけだよ』とよく言われてきました。この3年間は土屋監督を信じてついてきただけです。入学前、甲子園は遠い夢でしたし、ドラフト候補として話題にしていただくなんて想像もしていませんでした。でも今、中学時代から有名だった選手たちに近づけたかもしれません。プロの一軍のまっさらなマウンドで、そういう選手たちと投げ合う姿をみんなに見せたい」

 1026日、普通の野球少年だった本田が、その未来をこじ開ける。

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