大阪桐蔭と済美。「のびのびプレー
できる国体」にみる強豪校の思惑

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

 初戦で三本松(香川)にコールド勝ちした東海大菅生(東京)の若林弘泰監督は冗談交じりにこう語った。

「3年生には『ここでミスしたら五厘だぞ』(髪の毛を短く刈る)と言いました。その言葉、彼らには一番効きますから」

 この時期、丸刈りよりもちょっとだけ伸びた髪をきれいに整えている選手が目立つ。三本松打線を6回1失点に抑えた松本健吾(東海大菅生)は「甲子園みたいなガチガチの緊張はありません。たくさんのお客さんのなかで久しぶりの実戦だったので、楽しく投げられました」と言う。中村奨成(広陵)など何人もが「楽しくプレーできた」と口にした。

 そのような普段より力の抜けた選手たちのなかで、ひとり闘志をみなぎらせていたのが済美(愛媛)のエース・八塚凌二だった。もちろん、初戦の対戦相手がセンバツの優勝校である大阪桐蔭(大阪)だったことも大きい。開催県代表としての責任も感じていただろう。

 大阪桐蔭にリードを許していた済美は6回に逆転。8回を終わった時点で4対3。それまで八塚は7安打を打たれながらも9三振を奪う力投を見せていた。あと3つのアウトを取れば春の王者を下すことができる。

 しかし、ここから大阪桐蔭が驚異の粘りと破壊力を見せた。9回裏の先頭打者、6番の山本ダンテ武蔵がツーベースヒット。続く加藤大貴がライト前ヒットでノーアウト一、三塁。この好機に8番打者の坂之下晴人がライトスタンドに劇的なサヨナラホームランを叩き込んだ。

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