自らを鼓舞する「清宮語録」に見る、
1年生からプロ決断までの2年半

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 内ヶ崎誠之助●写真 photo by Uchigasaki Seinosuke

 翌日の全体練習後、清宮はひとり居残って「特打」に臨んでいた。左の打撃投手に、アウトコース中心に投げ込んでもらい、ボール球はしっかり見逃し、ストライクだけを強く広角に弾き返す。これは明らかに、打撃投手をふたりのライバルに見立てた練習だった。

 昨秋の東京大会決勝で5三振を喫した日大三の櫻井周斗と、昨夏に敗れた八王子の早乙女大輝だ。

「(昨秋の東京大会決勝で櫻井に)5三振を喰らった借りは返さないといけないと思っています。(開会式で)八王子の主将が優勝旗を返還する姿を見て、悔しさが再燃してきて......。自分自身、去年の最後の打席は忘れられないし、優勝旗を取り返すために今までやってきた。去年から成長した姿を見せつつ、声を出してチームを引っ張っていけたら。今年のセンバツに出ることはできましたけど、夏の甲子園は高校球児にとって特別な舞台。やっぱり勝たなきゃ野球は面白くない」

 西東京大会の準決勝では、八王子にリベンジを果たした。この日は、清宮だけでなく、早実ナインの目の色、表情がそれまで以上に険しかった。

「ここで勝たなければ、自分たちがこの1年取り組んできたことの正しさが証明されない。自分たちがしっかり成長したことを示すためにも勝たなきゃいけない。そういう意味では、これまで(戦った相手)とは全然違いました」

 しかし、甲子園にたどり着くことはできなかった。決勝の東海大菅生戦では、守備のミスが相次ぎ、2対6で敗れた。

「最後の夏は笑って終わりたい」と話していた清宮だったが、高校野球生活の終わりはやはり涙に暮れた。

5 / 7

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る