外国人がクルクル三振。侍ジャパン・
田浦文丸の魔球に世界がたまげた

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 内ヶ崎誠之助●写真 photo by Uchigasaki Seinosuke

 同じく高校日本代表の川端健斗とWエース体制を築いていた秀岳館では、この夏の熊本大会から、常時、リリーバーとしてマウンドに上がってきた。4季連続出場し、優勝候補の一角と目されていた甲子園では、初戦の横浜戦で脱水症状に陥り、2回戦・広陵戦の9回には中村奨成に3ランを浴びてチームは敗れた。しかし、こうしたロングリリーフや抑えとして起用されたことによって、投手としての"幅"が広がったと、田浦は明かす。

「秀岳館でリリーフという立場で大事な場面を経験させてもらってきた。甲子園ではイマイチでしたけど、それが今の自分の一番の武器だし、世界大会でも生きています」

 スーパーラウンドの最終第3戦では、韓国との対決が待つ。現状ではその勝者が、アメリカと決勝で戦うこととなる。韓国にせよ、アメリカにせよ、左打者が多く、日本の左投手の起用がカギを握るなかで、田浦という飛び道具は心強い存在だ。

 練習中の田浦を眺めていると、ちょっとした合間があれば誰かとボールを使ってじゃれ合い、ひとりのときも白球を放り投げて遊んでいる。ボールは友達――とにかく根っからの野球小僧なのだろう。

「へへへ、いつもボールは手にしておきたいタイプですね。国際大会のボールにもうまく対応できているので、ベンチでもその感覚を忘れないように、常にボールを握っています」

 そういう姿勢が投手としての探究心にもつながっているのかもしれない。

 試合のなかった9月6日に、日本代表選手たちは束の間の観光を楽しみ、その後、田舎町サンダーベイのショッピングモールに出かけた。偶然、居合わせた筆者が見たのは、ショップのウインドウを見つめながら、シャドウピッチングをしている田浦の姿だった。

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