「イチローの恋人」が宝塚ボーイズで教える、野球よりも大切なこと (4ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Sportiva

 選手間ミーティングでも、通常はレギュラーが中心となって発言しがちだが、宝塚ボーイズでは野球の実力に関係なく、どんどん発言させる。

「発言するとなれば、考える習慣が身につきますし、いろんなことに気づくようになる。自らが気づいて、発言できる集団が理想。そうした選手に育てて、高校の世界へ送っていきたい」

 指導するなかで、何度も出てくるのが"意識"の二文字だ。ティー打撃で同じ数を打つとしても、ただ漠然と打つのか、それとも目的を持って打つのかで、成果はまったく違ってくる。大事なのは「何をやるかではなく、何を考えてやるか」と奥村監督は言う。そうした意識の大切さを教えてくれたのが、イチローだった。

 20歳でオリックスの打撃投手をしていたとき、19歳のイチローと出会い、技術以上に驚かされたのが意識の高さだった。イチローがあるときに発した言葉を、奥村監督は今でも忘れない。

「納得できないスイングでもヒットは出ますし、三振しても納得できるスイングはあります」

 結果に一喜一憂するのではなく、自分のすべきことに徹する。その意識があってこその結果だということを奥村監督は、選手たちにこう話す。

「プロの技術は真似できないけど、プロの意識を真似ることはできる」

 宝塚ボーイズは田中将大(現ニューヨーク・ヤンキース)が所属していたチームとしてメディアにも取り上げられることがあるが、田中も奥村の指導に大きな影響を受けたひとりだ。今につながる気持ちの強さ、そして相手の考えや試合の流れを"読む力"は、宝塚ボーイズで過ごした日々の練習のなかで鍛えられていった。

4 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る