「イチローの恋人」が宝塚ボーイズで
教える、野球よりも大切なこと

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Sportiva

 奥村監督に指導の柱について尋ねると、「当たり前のことを当たり前にやる。ここが基本です」という答えが返ってきた。

「クラブチームだから『野球だけ頑張ればいい』という考えは絶対にダメ。学校のテストの結果、通知表、先生のコメントも確認して、気になるところは本人と話をします。子どもたちには『普段の生活をしっかりすることが、すべて野球の成長につながる』と言っていますし、そこは徹底させています」

 あいさつ、礼儀、時間厳守、整理整頓にはじまり、練習中でも全力疾走、選手間ミーティングなど、厳しく指導している。どこのチームでもやっていることかもしれないが、宝塚ボーイズは特にこの部分を徹底している。

「当たり前のことを当たり前にすることで、心が鍛えられます。高校野球を見ていても、いいチームだなと思うところは、選手の心を磨く指導をしています。技術を教えることはもちろんですが、そのためにもまずは心です」

 とはいえ、毎年多くの部員が入ってくるなかには、学校などで問題を起こす者もいる。そういった生徒との関わりについて聞くと、奥村監督は「大事になるのが家庭です」と力を込めた。

「いくら僕が言っても、家で逆のことを言ったら子どもは変わらない。だから、気になることがあれば、父兄の方にはできるだけ集まってもらって、僕の考えを理解してもらうように心がけています。そういったときにお願いするのが『ぜひ時間をつくって、練習を見にきてください』と。練習を見てもらえば、宝塚ボーイズは何を大事にしているチームなのかがわかってもらえるはず。そうすれば、たとえば自分の子どもが試合に出ていなかったとしても、なぜ出られないのかが見えてくる。僕たちのいちばんの役割は、中学生の子どもたちが先々、自立してやっていけるように、その力をつけてあげること。そのための3年間だと思って、子どもたちと接しています」

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