広陵・中村奨成も届かなかった最高打率。29年前の達成者が語る心情 (3ページ目)

  • 加来慶祐●文 text by Kaku Keisuke
  • 岡沢克郎●写真 photo by Okazawa Katsuro

 古閑は高校卒業後、法政大を経て九州石油に就職し、軟式野球部で6年間プレー。現在は関連会社のJXトレーディング株式会社で営業を担当している。自身が出場した88年の夏を最後に、母校は甲子園に出場していないこともあって、高校野球に対する関心はさほどくない。しかし、毎年夏になり、強打者が出現すると、周囲の人々は「今年こそ危ないぞ」と古閑にプレッシャーをかけてくる。

「だから、嫌でも気になってくるわけです。もちろん人間ですから、自分の記録が破られるというのはいい気がしません。今年は中村くんの活躍によって、準決勝、決勝は例年以上に注目しました。決勝の2打席目の三振で記録更新が難しくなったときに感じた"ありがたさ"。それは夏の甲子園という歴史と伝統のある大会で、こんな自分がいまだに記録を保持していることに対する正直な気持ちだったのかもしれないですね」

 無関心を装いながらも、甲子園へのリスペクトは消えることはなかった。

「ただ、これだけ打者のレベルが上がってくると、記録が破られる日は遠からずやってくるでしょうし、それだけの選手を見てみたい気はしますよね」

 あの中村でも打ち破れなかった古閑の大記録。そして来年が記録達成から30年目の節目にあたる。

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