今夏は2年生が凄かった。甲子園で光った100回大会の主役候補たち (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 その矢吹よりも、さらに自分のポジションを支配し、自由自在に甲子園のグラウンドを駆け回ったのが、東海大菅生の遊撃手・田中幹也。

 選手の大型化が目立つ昨今の高校野球界にあって、田中のようなサイズ(166センチ、61キロ)の選手は逆に目立つ。しかも体は小さいが、やることが大きいから、見ていてこんなに痛快な選手もいない。

 三遊間も二遊間も、前も後ろも、苦手なコースがない。かつてプロ球界の名手と呼ばれた選手から「実は苦手な打球のコースはある」と告白されたことがあったが、田中のプレーを見ていると、まったくそれを感じさない。

 三遊間を抜けようかという打球でも、そこに田中がいる。超人的なポジショニングと打球への反応、そしてボールにチャージするまでの猛烈なスピード。決して地肩は強くないが、その分、捕ってから投げる速さと送球の正確性は、やはり高校生レベルの域をはるかに超えている。

 こんな選手がチームメイトにいたら、毎日の野球がどんなに楽しいことか。田中幹也は、そういうすごさを持った"小さな巨人"である。

 その田中とは対照的に、181センチの長身を生かしたダイナミックなプレーを持ち味としているのが、天理の遊撃手・太田椋。

 長身の高校生遊撃手がこれほどバランスよく動いて、安定したフィールディングをする姿は、坂本勇人(光星学院→巨人)の高校時代と重なる。

 なかには、手足の長さが邪魔になる選手もいるが、太田はそれを味方につけて、守備範囲を広くしているのが彼の才能といえる。

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