元ドラ1、元独立リーガー、元リストラ担当...甲子園を彩る異色の指導者 (5ページ目)

  • 清水岳志●文 text by Shimizu Takeshi
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 BCリーグ時代を含め、日下は地域に密接した活動を行なってきた。三本松は東かがわ市にある唯一の高校で、日下は「地域の人たちに支えられた」と言う。

「人口が減っている地域ですので、選手たちのプレーで元気になってくれればうれしい。市民の人たちのために戦うという気持ちはあります。子どもらも地域を背負っていることを感じて、頑張ってくれている。それを見た子どもたちが、将来、うちの高校を目指してくれれば」

 どこにでもある普通の県立校。こういう学校が強ければ地域は活性化され、注目度も上がる。

「ただ......」と日下は言う。

「県立を選んだ以上は、私も所詮、駒ですから。どこの学校に配属されても、自分のパフォーマンスは出さなあかんと思っています」

 自分の任務を遂行するために100%を注ぐ。こんな指導者と巡り合えたら幸せだろうと思う。

 最後に、NPB経験者のふたりの監督も、この夏の大会で快進撃を見せた。

 27年ぶりにベスト4入りを果たした天理(奈良)の中村良二監督は、1986年夏の天理初優勝のときの主将で、高校卒業とともにプロ入りし、近鉄、阪神でプレーした。引退後、天理大の監督を経て、2014年にコーチとして母校に戻り、昨年から監督に就任した。

 初戦の大垣日大(岐阜)に勝ったあと、インタビューの第一声がこれだ。

「こんなに早く甲子園に来られて、子どもたちに感謝している」

 その後も、「まさか僕がここに来られるなんて......」と言葉を詰まらせるシーンもあった。

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