元ドラ1、元独立リーガー、元リストラ担当...甲子園を彩る異色の指導者 (4ページ目)

  • 清水岳志●文 text by Shimizu Takeshi
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 三本松(香川)は第1回大会の地方大会から出場している、いわばレジェンド校。初戦で下関国際(山口)を破り、甲子園初勝利に導いたのが日下広太監督だ。

「選手たちには『歴史を変えよう』と節目のときに言い聞かせてきました。うちは第1回大会から出ているけど、甲子園では1勝もしていない。『だから、お前たちが変えろ』と。勝利したときは、OBとしておめでとうと言いました」

 おそらく日下監督は、BCリーグ経験者として初めて甲子園にやってきた監督だろう。三本松を卒業し、順天堂大学を出てからBCリーグの石川ミリオンスターズでプレーした。そこでは、かつて西武などで活躍した金森栄治氏(現・ノースアジア大コーチ)が監督をしていた。

「金森さんには『正確なプレーをやっていかなあかんよ』と。基礎、基本を徹底しろと言われました」

 ただ、日下にとってBCリーグはプロ野球選手になるためのものではなかった。夢は故郷での指導者だった。日下は新潟アルビレックスに移籍したのちに現役を引退。その後、3カ月の中学校勤務を経て、母校に赴任するまでの3年間は養護学校の講師として勤務した。そこで教えるということの基本を学んだという。

「この子らはどうやったら動けるのやろう。どうやったらこの子らに伝わるんやろう。すごく考えさせられた時間で、引き出しが増えました。ボールを投げるにしても、ヒジをどうしよう、手首はどうしようといったように、言葉のレパートリーが増えました」

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