なぜ今夏の甲子園はボールが飛ぶのか。本塁打増を解明する3つの仮説 (5ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 今年、この種のデータは確認できていないが、この夏の甲子園は常に一定以上の強さの風が吹いている。しかも、センタースコアボード上にある6枚の旗を見ていると、実に忙しく向きを変えている。それも6枚がバラバラの方向にたなびいていることも珍しくなく、非常に複雑な上空の風向きを想像させる。それを実証するかのように、内野フライが大きく流され落球、もしくはあわや落球という場面も例年以上に目立つ。

 そうした風の影響を受け、タイミングよく捉えた打球は軽々とフェンスを越え、バットで拾ったように見えた打球も予想以上に伸びてスタンドインする。ホームランを放った選手に話を聞くと、「入ると思わなかった」「思ったよりも飛んでくれた......」といったコメントが多かった。

 以上を総括すると、近年の打力向上の流れに加え、今年はプロ注目の投手が少なく、さらには風の恩恵も受けている、と考えられる。このペースでいけば60本塁打を超え、大会記録更新の可能性は十分考えられる。大会はいよいよ佳境に入っていくが、この"飛び"を味方につけるチームはどこなのか。覇権の行方も気になるが、次々と白球がスタンドに消えていく夏を楽しみたい。

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