なぜ今夏の甲子園はボールが飛ぶのか。本塁打増を解明する3つの仮説 (4ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 実は、この浜風の異変が囁かれたのが2006年だった。プロ野球が開幕すると、当時現役だった金本知憲(現・阪神監督)がライト方向へ1試合3本塁打を記録するなど、これまでの甲子園では考えにくい出来事が次々に起きた。

 そこで周辺取材をしてみると、阪神担当のベテランカメラマンは、2005年の3月に球場から500メートル足らずの位置に建設された高さ40メートルの14階建てマンションの存在を挙げた。4棟250メートルにわたりそびえるマンションが風の通りを妨げ、それにより浜風の力が弱まったというわけだ。

 また、阪神戦の実況を数多く担当していたアナウンサーは「センター方向へのライナーがネット裏から吹く風に押されて、途中で加速するような伸びを見せるときがある」と言った。

 バックネットのスタンド最上段に20メートルほどの長さで設置されていたフェンス広告が2005年のシーズンから別の場所に移され、金網越しにかなり強い風が入るようになった。この風がスタンド最上段からグラウンドへ流れ込み、打球を押すようになった、というのだ。前出の内匠スカウトもバックネット上段を指さし、「あそこからの風が通るようになって、プロでもホームランが前よりも出やすくなったはず」と口にした。

 2006年に関していえば、「台風の影響で、例年とは逆の東からの風が大会中に多く吹いていた」という気象予報士の証言を得たこともあった。

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