なぜ今夏の甲子園はボールが飛ぶのか。本塁打増を解明する3つの仮説 (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 確かに、昨年は今井達也(作新学院→西武)、寺島成輝(履正社→ヤクルト)、藤平尚真(横浜→楽天)、堀瑞輝(広島新庄→日本ハム)と、ドラフト1位で指名された投手が4人もいた。前出のコーチが言う。

「際立つ投手は少なくても、140キロを超える球を投げる投手はどのチームにもいるぐらい多い。それが逆に飛ばされる原因なのかなと思います」

 ここまでの戦いでは四死球の多さも目立つが、アバウトな制球力での投球は、打撃強化が著しいチームの格好の餌食になっているとの見方だ。

 なかには2011年からNPBが導入した低反発球の影響で、従来のボール(飛ぶボール)の在庫が出回っているのでは、という声もあった。さすがにそれは......と思いながら、そんな珍説が出るほど、今年の甲子園はボールが飛んでいるということだ。

 さらに理由を探っていくと、やはり目を向けたくなるのが風だ。甲子園は、プロ野球の本拠地のなかでもホームランが出にくい球場と認知されている。両翼95メートル、中堅118メートルと、サイズは12球団の本拠地のなかで横浜スタジアムに次ぐ狭さである。ただ、左中間、右中間のふくらみは最も大きい(最深部は118メートル)ことに加え、ホームランが出にくいと言われている理由のひとつに風の影響がある。

 甲子園は、一塁側アルプス後方からレフト方向に通称"浜風"と言われる特有の風が吹き、それがライト方向への打球を押し戻すと言われている。

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