なぜそこにいる? 東海大菅生は神出鬼没の「忍者」がショートを守る (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

 高岡商戦の最終回、二死一、二塁の大詰めでは、谷内遥紀のセンターへと抜けそうなゴロを滑り込みながら押さえ、二塁ベースカバーに入った小玉佳吾にトスして試合は終わった。田中はこのシーンを「打ちにいく瞬間に『飛びそうだな』と思って、一歩目のスタートが早く切れた」と超人めいた言葉で振り返った。見方によっては「田中に始まり、田中に終わった」と言える試合だった。

 東海大菅生の若林弘泰監督は試合後、田中の好守についてこうコメントした。

「彼以上のショートはそうそういないと思います。......こう言うと、調子に乗っちゃうかな?」

 若林監督は田中のことを、親しみを込めて「サル」と呼んでいるという。

「本当に感性というのかな、それが守備や走塁にも出ますよね。ポジショニング、球際の強さ、グラブさばきのうまさ......。今日も最後の打球なんか難しかったと思うんですよ。小玉との二遊間は高校生のなかでもトップのほうじゃないかな。安心して見ていられるので、守備からゲームを組み立てられます」

 この日、少なくとも3本はヒットになろうかという打球をアウトに換えてしまったのだ。それは2安打2四球1盗塁と大暴れした打撃・走塁面をかすませるほどのインパクトがあった。

 試合後の囲み取材で、「参考にしている選手」を聞かれた田中はこう答えた。

「ポジションは違うんですけど、広島の菊池涼介選手です。忍者みたいな速い動きは意識しています」

 図らずも本人から「忍者」というキーワードが出た。

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