なぜそこにいる? 東海大菅生は神出鬼没の「忍者」がショートを守る (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

 田中幹也は「忍者」だ――。

 以前から田中のプレーを見ていて、そう感じることが何度もあった。動き出しが速くスピーディーな身のこなし、クッション性の高いグラブさばきはもちろんのこと、何よりも光ったのは神出鬼没のポジショニングだ。打った瞬間にヒット性と思われた打球を、この166センチ、61キロの小兵がいともたやすくさばいてしまう。本人も守備でこだわっている部分について、真っ先に「守備範囲の広さとポジショニング」を挙げている。

 捕手の鹿倉は田中について、こうも語っていた。

「幹也の守備は安心して見ていられます。あとはポジショニングで『ここにいたか!』と驚くこともよくあります。1試合に2~3本はヒットをアウトに換えてくれているんじゃないかなと。多い試合なら5本くらいありますよ(笑)」

 この試合、甲子園球場に詰めかけた4万6000人の大観衆が田中にもっとも大きな歓声を送ったのは、4回裏に飛び出したアクロバティックなプレーだった。

 先頭の吉本樹の詰まったショートゴロを、田中は素早くチャージして捕球すると、一塁へジャンピングスロー。軽々とアウトにしてみせたのだ。いかにも派手なプレーで観衆は沸いたが、田中にとっては「練習の成果が出た」と思う程度で、とりたてて会心のプレーというわけではなかったという。

 むしろ田中が「ベストプレー」と自画自賛したのは、8回裏に飛び出した「大遠投」だった。

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