彦根東と東筑の甲子園。公立進学校はどんな「野球と勉強」をしたのか (6ページ目)

  • 清水岳志●文 text by Shimizu Takeshi
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 福岡県大会の決勝戦、「バッテリーの息が合ってきた。お前たちふたりで考えてピッチングを組み立てなさい」と青野監督は指示した。「僕がサインを出すと間違うから」と笑うが、選手がこれまで育(はぐく)んできた自主性に任せたのだ。「決勝戦は僕からのサインがなかった。いい配球をしていました」と喜ぶ。

 青野監督が続ける。

「僕は口うるさく言いません。勉強のことは学校が言ってくれますし、僕は野球を教えるだけ。野球でうまくなって根性とかが芽生えればいい。生活面で言うことはあるけど、野球も押しつけてないし、怒らないですね。野球が好きで野球小僧みたいになれよと。野球は楽しまないとだめ。苦しんでやるもんじゃない。それが原点です。負けて悔しいから努力する。勝つためにさせられるのは違うだろ、って思ってやっている」

 任された子どもたちの独立心はすでに育っている。青野監督は言う。

「口うるさく言わないのは、みんな相応に動きますから。自由なところは自由でいい。時間が限られているのに闇雲にやってもうまくならないから」

 だが、甲子園で勝つことはできなかった。青野監督は、豪快な打力のチームに思いを馳せる。

「済美みたいにホームランをガツンと打てる。すごいなぁ、こんな選手が育たないかな、こんなチームにできないかなと(笑)。時間がないのに細かいサインプレーに時間を割くくらいなら、シンプルに打つことと守ることに集中する。強いチームはシンプルですよ。日本のプロ野球も、中心選手は外国人が多い。あれが日本人にならないと、日本は強くならない」

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