彦根東と東筑の甲子園。公立進学校はどんな「野球と勉強」をしたのか (5ページ目)

  • 清水岳志●文 text by Shimizu Takeshi
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 野球部の場合、勉強もできて、甲子園を目指したいという子が興味を持ってくれる。来年が120周年ということで、現在の2年と1年は多めに取ることができた。野球部には3学年で30人弱の推薦組がいる。

 ただし、推薦制度があるから勝てるのかというと、そんなことはない。1回戦の先発スタメンの中でキャッチャー、サード、ライトの3人が一般入学組だった。入ってしまえば、一般と推薦のクラス分けもなく、勉強の課題もまったく同じだ。

 甲子園で控えだった山本悠可は一般組。ゲーム後に「京大工学部を目指している」と宣言した。「勉強も野球も集中してやってこられた」と充実した日々を明かす。「山本が京大狙うって言ったんだってな」と青野監督もみんなの前で豪快に笑った。

「あいつは勉強もやれる東筑で野球がしたいと言って、校区じゃないところから通学している。キャッチャーの北村(謙介)もそうですよ」

 去年の野球部卒業生は、九州大、神戸大、北海道大など、多くの国公立大に進学した。

 専用グラウンドもなく、普段の練習はどうしているのか。

 平日午後の練習時間は6時限授業の日が4時半から、7時限授業では5時過ぎからで、8時には完全下校になる。グラウンドはラグビー部などと共有で、平日に全面を使えるのは月曜、金曜のみ。水曜は6時から、火曜と木曜は半面しか使えない。「照明がないので秋はすぐに暗くなる」と青野監督は苦笑いだ。使える面が狭い日のバッティング練習はバックネットに向かって打つ。広く使える日にはボールが見える限り、とことん打ち込む。そのメリハリがいいのだという。

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