彦根東と東筑の甲子園。公立進学校はどんな「野球と勉強」をしたのか (3ページ目)

  • 清水岳志●文 text by Shimizu Takeshi
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 チームのなかで優秀なのはセンターの太田剛志、レフトで3番を打つ高村真湖人。2年生では増居。「始業時間の1時間前に来て勉強をします。その時間は集中してやれる」と高村。ファーストの吉本孝祐は大会期間中、「宿題はないから課題を見つけてやっています」と言う。

「僕が高校生の頃より勉強の意識は高い。昔は朝練があったけど、朝勉強はなかった。今は、勉強は勉強、野球は野球と集中してやる」と松井部長。それは学校の方針でもある。

「ブレークスルー」──監督が夢のなかで誰かと会話した言葉だそうだ。壁を突き破る。「歴史的な1勝になりました」と村中監督も歓喜した。夢が正夢になった。2回戦で青森山田に敗れはしたが、彦根東野球部の歴史は確かに甲子園に刻まれた。

「伝統校のプライドで言うなら、野球に関してはないので、築いていかないといけないなと思います」。松林部長はスタンド下のインタビュー控え室で嬉しそうに語った。

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 一方、10対4で済美に打力の差を見せつけられた東筑。今年は甲子園で勝つことはできなかったが、山本哲也部長は「福岡県の公立で夏の甲子園に出たのは、ここ30年でうちだけです」と胸を張る。1987年と1996年と今年の3回だ(東筑は通算では6回)。

 東筑は小倉高校と並ぶ北九州の雄といえる存在だ。ちなみに小倉は2度の全国優勝経験があるが、1956年以来、夏は出ていない。小倉とはライバル関係にあり、野球の定期戦もある。学校行事で、全校応援で臨むそうだ。

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