前橋育英の「神がかり男」。
野球は高校までゆえ、運も力も出し尽くす

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

「決めて当たり前」と軽く見られがちでプレッシャーのかかるバントだが、堀口が意識していることは「一発で決めること」。守備から攻撃のリズムをつくり、流れを大切にする前橋育英の2番打者らしい心がけだった。

 前橋育英の清水陽介部長はそんな堀口の功績を認めている。

「気持ちを前に出すタイプで、チームの起爆剤のような存在になっていますね。彼が活躍するとチームに火がつきます」

 チームのキーマンになっている堀口だが、本格的な野球はこの夏が最後だという。前橋育英のレギュラー選手のなかで、高校卒業後に野球を続けないのは堀口だけだ。

「6月くらいまで迷っていたんですけど、自動車整備士になるために専門学校に行くことにしました。もともとクルマが好きで、映画の『ワイルドスピード』とかを見て『アメ車に乗ってみたいな』と思っていたんです(笑)。野球はやりきったので、未練はありません。昔は『プロ野球選手になりたい』と思っていましたけど、もう現実を知ったというか(笑)」

 8日の甲子園初戦・山梨学院戦ではヒットは出なかったものの、2犠打1四球という味わい深い働きでチームの勝利に貢献した。守備でもエラーをした直後に難しいバウンドを見事にさばくなど、流れを相手に渡さなかった。

 15日の2回戦・明徳義塾戦でも、影響力のある堀口のプレーは勝敗を左右するかもしれない。神がかった男の夏は、まだ続いている。

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